本書の結論は「ビジネス戦略の世界では、プレファレンス(好意度)向上は競争において不可欠な要素」です。
本記事では、プレファレンスの真髄に迫り、購買行動とブランドエクイティの関連性を探ります。消費者がなぜあるブランドを選ぶのか、その複雑な法則と戦略を紐解きます。
詳細については本書で詳しく数式や数学的思考を用いてとても分かりやすく解説されていますが、本記事ではプレファレンスについて数学的な要素をすべて省いて解説いたします。
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本書『顧客起点マーケティング』は商品やサービスそのものとなる「プロダクトアイデア」と、商品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段である「コミュニケーションアイデア」という2つのアイデアをもとに「プレファレンス」を向上してビジネスを成功に導いていくかをもとP&Gでスマートニュースを大成功させた西口一希さんが解説してくれています。
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ビジネス戦略の成否は「プレファレンス(好意度)」の度合い
ビジネス戦略の成功は、確率論的な視点から捉える必要があります。この観点から、最も重要な要素は「プレファレンス(好意度)」です。
ビジネス戦略を立案する際に、コントロールできない要因に資源を投じてしまうことは避けなければなりません。ビジネスの成否は変数を上げる確率を左右するのに重要なのがプレファレンスなのです。
個人の購入意思決定において、プレファレンスは大きな影響力を持っています。顧客や顧客層の好意度を高めることは、ビジネスの成功に直結する要素と言えます。
ビジネス戦略の立案において、経営資源を最適に活用することは至上の重要性を持ちます。
マーケティング的な観点からアプローチする際、無駄なリソースの浪費や避けるべき存在が問題となります。成功するためには、これらに配慮しながら戦略を構築する必要があります。
変数となる経営資源の投下先
ビジネス戦略の成功は、経営資源の適切な配分にかかっています。特にビジネス戦略において、3つの主要な要素が経営資源の分配に大きな影響を与えます。それらは以下の通りです。
- Preference(好意度):製品やサービスに対する顧客の好意度は、購買意思決定に大きな影響を与えます。したがって、好意度を高めるためのリソースを十分に投入する必要があります。ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっており、その確率を高めるために最も重要なのが『プレファレンス』であることは言うまでもありません。
- Awareness(認知):製品やブランドの認知度は市場での成功に不可欠です。購買者が存在を知らなければ、好意度や配荷の問題は関係ありません。従って、認知度向上にもリソースを割くべきです。
- Distribution(配荷):効果的な製品の配送や流通は、成功に向けた重要な要素です。良い製品やサービスでも、適切な場所に届けなければ成功は難しいでしょう。
ビジネス戦略の成功は、経営資源を適切に配分し、制約事項を理解しながら構築することにかかっています。マーケティング的な観点からのアプローチは、好意度、認知、配荷の3つの要素に焦点を当てることが不可欠です。
これにより、戦略の成功確率が高まり、競争市場での優位性が確立されるでしょう。ビジネス戦略の成功は、確率を高める最も重要な要素がプレファレンスであることを肝に銘じましょう。
持っていただきたいイメージとしてはPreference(好意度)をあげていくためにAwareness(認知)とDistribution(配荷)の向上を行うのであり、あくまでもPreferenceに焦点を当てることです。
プリファレンスが重要な理由をさらに詳しく
プリファレンス(好意度)は、マーケティングにおいて不可欠な要素であり、顧客の購買意思決定に深い影響を与えます。顧客の購買行動は、次の4つの法則に基づいています。
法則 1: 個別の購買決定
消費者一人一人は独自の好みや嗜好を持ち、購買決定を個別に行います。これは、同じ商品やサービスに対しても異なるプリファレンスが存在することを意味します。したがって、マーケティング戦略は個別の消費者に合わせて調整されるべきです。
法則 2: ランダムな購入行動
購入行動はランダムに発生することがあります。消費者の購買行動はさまざまな要因に影響を受け、時には予測不可能なものとなります。マーケティング戦略は、このランダム性を理解し、効果的に対応する必要があります。
法則 3: カテゴリーごとの一定のプリファレンス
消費者は異なる製品やサービスのカテゴリーごとにほぼ一定のプリファレンスを持っています。つまり、特定の製品カテゴリーに対して一貫性のある好みを持つことが一般的です。この法則を理解し、製品やサービスをカテゴリーごとに最適化することは重要です。
法則 4: プリファレンスの高いものが高頻度で購買される
最も重要な法則の一つは、プリファレンスの高い商品やサービスがより高頻度で購買されるということです。顧客が特定の商品やブランドに高い好感を持つ場合、それらを選ぶ傾向が高まります。したがって、プリファレンスを高めることは、ビジネス成功の鍵と言えます。
プリファレンスの重要性
プリファレンスが購買意思決定において重要な理由は、プリファレンスの高い商品やサービスがより頻繁に購買されるためです。企業は、顧客が自社商品を選ぶ頻度を高めるために、プリファレンスを理解し、育てる必要があります。ターゲットの顧客に対して、自社商品に高いプリファレンスを持ってもらうことは、競争の激しい市場で成功するために不可欠です。
プレファレンスの鍵:ブランド・エクイティー
プレファレンス(好意度)とは、消費者がある商品に対する好意度を表す指標で、主に以下の3つの要素によって構成されます。それは、ブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスです。この中で、ブランド・エクイティーは、消費者に提供される目には見えない価値を指し、プレファレンスを支配する最も重要な要素の一つです。
プレファレンスの構成要素
- ブランド・エクイティー
ブランド・エクイティーは、ブランドが消費者に提供する非物質的な価値を指します。これは、ブランドの信頼性、認知度、イメージ、歴史など、商品そのものの特性や価格とは異なる要素です。消費者は、これらの要素に対して好意的な評価を持つブランドを好む傾向があります。ブランド・エクイティーを高めるためには、ブランドの強化、広告、プロモーション、社会的貢献などが重要です。 - 価格
価格は、消費者の購買意思決定に直接影響を与える要素です。価格が適切であれば、消費者はその商品を購入しやすくなります。ただし、価格だけではなく、コストパフォーマンスも重要です。消費者は、価格と製品の品質や価値を比較し、最適な選択を行います。 - 製品パフォーマンス
製品の性能や品質もプレファレンスに影響を与えます。消費者は、製品が彼らの期待を満たし、ニーズに適しているかどうかを評価します。製品のパフォーマンス向上やイノベーションは、競争優位性を築くために不可欠です。
ブランド・エクイティーの重要性
ブランド・エクイティーが他の要素に比べてプレファレンスに大きな影響を与える理由は、ブランドが提供する非物質的な価値が持続的であり、消費者との感情的な結びつきを形成するからです。
消費者は、特定のブランドに対して「特別だ」と感じたり、そのブランドに対する興味を持つことがあります。
これにより、消費者は新商品や別の商品に対しても期待感や好感度を抱き、ブランドの新たな製品や拡張に対してオープンな姿勢を示すことができます。
ブランド・エクイティーを高めることは、競争の中で差別化し、新たな顧客を引き寄せるための鍵です。ブランドは、単なるロゴや名称以上のものであり、その価値を高め、消費者の期待に応えることがビジネス成功の一環となります。
マーケティング戦略において、ブランド・エクイティーの重要性を認識し、戦略的に育てていくことが不可欠です。ブランドが消費者の心に魅力的な印象を刻むことで、プレファレンスを築くことが可能となり、ビジネスの成功に寄与します。
消費者内のエボークト・セットの謎
購買決定は消費者の心の中で繰り広げられる複雑なプロセスです。消費者は、何を購入しようと思った際、自身の「エボークト・セット」と呼ばれる候補リストを持っています。そして、この候補の中から商品をランダムに選択して購入することが多いのです。
エボークト・セット(想起集合)とは?
エボークト・セット、または想起集合とは、購入を検討してもよいと考えるブランドや商品の集まりを指します。
具体的な例を挙げれば、コーヒーを飲もうと思った際に、どのメーカーのコーヒーを選ぶか、どのブランド名のコーヒーを購入しようかと考える瞬間がこれに当たります。
言い換えれば、購買意思が芽生えた瞬間、消費者の頭には既に選択肢が浮かんでおり、それがエボークト・セットです。
エボークト・セットの重要性
消費者は、購入意思を持った際に、通常、自分のエボークト・セットから商品を選ぶ傾向があります。このエボークト・セットは、個々の消費者ごとに異なり、その中からランダムに選択が行われます。ただし、ここには注目すべき事実があります。
プレファレンスの役割
消費者がエボークト・セットから選択を行う過程において、プレファレンスが大きな役割を果たします。つまり、消費者が特定のブランドや商品をエボークト・セットに含め、その中から選ぶ確率は、プレファレンスに依存するのです。
消費者は自分の好みや価値観に基づいてエボークト・セットを構築し、その中から購入先をランダムに選びます。この点が、マーケティング戦略においてプレファレンスを理解し、育てる重要性を強調します。
顧客が自社の商品やブランドをエボークト・セットに含め、その中から選びやすくするためには、ブランドの強化、商品の魅力向上、そして消費者との信頼関係の構築が不可欠です。
また、エボークト・セットは固定されたものではなく、ブランドの順位が変動することもあり、競争が激しい市場でブランドが浮上するチャンスも存在します。
プレファレンスの理解と積極的な戦略実施によって、消費者の購買意思決定において自社ブランドや商品がトップ・オブ・マインドに浮かび上がることを実現し、市場での成功につなげることができるのです。
プリファレンス向上の2つの方法
方法1: 年間購入率と年間購入回数の増加
既存顧客への拡大: 既存顧客へのフォーカスは、市場における自社ブランドのプレファレンス向上につながります。既存顧客に提供する製品やサービスの質を高め、顧客満足度を向上させましょう。また、価格と製品パフォーマンスの適合性を見直し、競争力を強化しましょう。顧客が自社ブランドを選びやすくなれば、年間購入率と購入回数が増加します。
方法2: 過去購入率とエボークト・セットの拡大
新規獲得とブランディング: 新規顧客獲得は、市場でのプレファレンス向上に欠かせない要素です。自社製品のブランディング戦略を強化し、消費者に印象的なエボークト・セット(想起集合)を提供しましょう。差別化戦略を展開し、自社ブランドが他と異なる価値を提供することを強調しましょう。これにより、新たな顧客が自社ブランドを選択する確率が高まります。
ここについては本書ではより具体的に数学的思考と数式を用いて具体的に書かれていますので確認してください。
まとめ
- プレファレンスはブランド・エクイティ、価格、製品パフォーマンスで構成され、ブランド・エクイティが最も重要。
- 購買行動には4つの法則があり、プリファレンスの向上は市場での成功に不可欠。
- プレファレンス向上のためには、消費者のエボークト・セットの上位に立つ必要がある
著者について
森岡/毅
Amazon.co.jp: 確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店単行本) eBook : 森岡 毅, 今西 聖貴: Kindleストア
1972年生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーンのブランドマネージャー、P&G世界本社(米国シンシナティ)で北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを歴任。2010年にユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイデアを次々投入し、窮地にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させる。12年より同社チーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、マーケティング本部長
今西/聖貴
1953年生まれ、大阪府出身。米国シンシナティ大学大学院理数部数学科修士課程卒業。水産会社を経て、83年、P&G入社。日本の市場調査部で頭角を現し、92年、P&G世界本社へ転籍。世界各国にまたがって、有効な需要予測モデルの開発、世界中の市場分析・売上予測をリードし、量的調査における屈指のスペシャリストとして長年にわたり世界の第一線で活躍。2012年、盟友・森岡毅の招聘によりユー・エス・ジェイ入社。現在シニア・アナリストとして活躍