超ベストセラーSF小説『三体』は科学と哲学が交差する物語:『三体』の魅力を私文営業マンが語る

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※この記事はネタバレを含んでいるかもしれません。初のSF小説の紹介になりますので何卒ご容赦ください。

「三体」この小説は人類の未来歴史予想図かと思わせられる素晴らしいSF小説でした。

今回は全三部作を読了したばかりの私から、この三部作がなぜSFファンや好奇心旺盛な方々にとって必読なのか、その魅力をご紹介したいと思います。

ビジネス書を読む息抜きとして1冊読んでみたら最後まで止まりませんでした。

実は私、1週間で全て読み切ってしまいました。それぐらい面白かった小説です。

この本はやたら難しいSF小説と思われがちですが、私文で営業マンという「理」という文字からかけ離れた人種でも理解できる、なおかつ感動を巻き起こす小説なのでSFを始めて読む人にもぜひおすすめしたいです。

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ベストセラーSF小説「三体」とは

『三体』シリーズは、全世界で約2900万部を超える売り上げを記録しています。これは、中国国内外を合わせた売上で、特に中国や英語圏で大きな反響を呼びました。

『三体』三部作は、壮大なスケールで描かれた物語で、それぞれの部が異なる時代やテーマを扱いながらも、共通するテーマとして人類と宇宙の関係、そして生存のための闘争を探求しています。

以下に三部作それぞれの概要を簡潔なあらすじとして紹介します。

第1部作:三体

物語は、文化大革命期の中国から始まります。

物理学者の葉文潔は、ある過酷な運命によって、人類と異星文明「三体文明」との接触を果たします。

三体文明は、三つの太陽が不規則に動く異常な惑星系にあり、常に破滅の危機に瀕しています。

葉は人類に失望し、三体文明に地球への侵略を呼びかけます。やがて、地球の科学者たちは、三体文明の存在とその脅威に気づき始め、両文明の接触がもたらす未来に対して恐怖と葛藤が広がります。

第2部:三体-黒暗森林

三体文明の侵略が差し迫る中、人類はその脅威に対抗する手段を模索します。

しかし、侵略者である三体人は、人類のあらゆる行動を監視できる能力を持っています。

学者である羅輯は、孤立した状況下で「黒暗森林理論」を考案し、宇宙全体が互いに敵意を抱く文明で構成され、誰もが他者を攻撃する危険性を抱えていると仮定します。

この理論をもとに、羅輯は三体文明との対抗策を見出し、地球防衛のための最後の希望を託されます。

第3部:三体-死神永生

最後の章では、地球と三体文明の闘争が終結した後の未来が描かれます。

技術の進歩により、人類は宇宙規模での戦略を展開するようになりますが、そこには予測不可能なリスクと犠牲が伴います。

天文エンジニアの程心は、三体問題と黒暗森林理論の解決に取り組みながら、宇宙の終焉に直面します。

最終的に、物語は宇宙そのものの存続や、文明の運命を巡る究極の選択を描き、人類が生き残るために何を犠牲にするのかが問われます。

この三部作は、単なるSF小説にとどまらず、深い哲学的・倫理的な問いを投げかける作品です。

人類の進化や存続、そして未知なる存在との出会いがどのような意味を持つのかを考えさせられることでしょう。

三体の見どころ、魅力とは

この三体の魅力やみどころはどのようなところなのでしょうか。

私なりの観点で熱弁させていただきます。

壮大なスケールで描かれる『三体』

この物語は、絶滅の危機に瀕した異星文明が新たな居住地を求めているというシンプルながらも戦慄を覚える設定から始まります。

この設定が中国の悲惨な文革の時代から始まり、なんと最後は宇宙の終焉まで発達するという一見しただけでは訳が分からない流れですが、これらすべて美しく鎖構造でつながっていくのです。

文革とは?

中国の毛沢東主席が主導した大規模な社会運動です。この運動は、共産党内の「資本主義的な考え」を排除し、社会主義の理念を強化することを目的としていました。

文化大革命の間、毛沢東は若者を中心とした「紅衛兵」と呼ばれる組織を動員し、知識人や党の幹部を「反革命分子」として攻撃しました。

学校や大学は閉鎖され、教師や学者は迫害され、伝統的な文化や宗教も批判されました。
(この迫害が物語ではのちの人類にとてつもない影響を与えます)

また、物語は数十年、数世紀ではなく、数千年にわたって展開し、人類の宇宙における位置や、迫る危機が時間とともに拡大していくのです。

ですが、なぜか人類の未来を言い当てているようなリアルさこれに驚かされます。

難解な科学の世界を登場人物たちが嚙み砕いてく

この三部作の特に素晴らしい点の一つは、科学に詳しくなくても、複雑な科学理論や概念が理解しやすく描かれていることです。

劉慈欣は、科学的な説明を物語に巧みに織り込み、読者にとってそれを理解するだけでなく、興味を持てるようにしています。

三体問題という物理学の概念や、ナノテクノロジーの詳細、さらには多次元空間という難解なアイデアなど、これらが教育的でありながらもスリリングに描かれています。

科学理論だけは読み飛ばしたかったですが、重要な要素が含まれているとなると全く読み飛ばせませんでした。

宇宙や組織に翻弄されながらも輝く登場人物たち

科学的な概念が大きな魅力である一方で、この三部作に登場する人間ドラマも非常に魅力的です。

出てくる人物たちすべてがとても素晴らしく際立っている、物語や構想に負けない強いキャラクターは本書の大きな魅力の一つです。

登場人物たちは複雑で共感できるキャラクターであり、それぞれが物語のテーマを反映する道徳的なジレンマや決断に直面します。

理想を抱きながらも失望した科学者の葉文潔や、決意と機転で困難に立ち向かう羅輯など、登場人物たちの葛藤や成長が、宇宙規模の危機を身近で切実に感じさせます。

私は個人的に史強という警察官がとても人間味があり大好きです。
彼なら主人公たちを助けてくれるそんな予感を持たせてくれる人でした。

哲学的な深さと道徳的な複雑さ

SFに詳しい読者も、このジャンルに初めて触れる読者も、『三体』三部作は特別な体験を提供します。

科学の厳密さ、豊かな物語性、そして哲学的な探求が融合し、単なる娯楽以上に、世界や宇宙について新たな視点で考えるきっかけを与えてくれるシリーズです。

私たち人間は他の生命にどれだけの影響を及ぼしているのか?

現代の私たちが持つ倫理観は果たして普遍的なものなのか?

宇宙という単位では私たちは何者で何を目指すのか?

終わりと永遠について

果てしないテーマを取り扱う本書ならではの洞察が得られるはずです。

この三部作は難しい問いに正面から向き合い、その答えを読者に委ねることで、最後のページを閉じた後も長く心に残る作品となっています。

まとめ

SFに詳しい読者も、このジャンルに初めて触れる読者も、『三体』三部作は特別な体験を提供します。

科学の厳密さ、豊かな物語性、そして哲学的な探求が融合し、単なる娯楽以上に、世界や宇宙について新たな視点で考えるきっかけを与えてくれるシリーズです。

心を広げ、想像力を刺激する文学の旅に出たいなら、私はこの『三体』三部作を強くお勧めします。

三体の情報

著者:劉慈欣について

1968年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。『三体』が、2006年から中国のSF雑誌《科幻世界》に連載され、2008年に単行本として刊行されると、人気が爆発。中国全土のみならず世界的にも評価され、2015年、翻訳書として、またアジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。今もっとも注目すべき作家のひとりである。

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訳者:大森 望について

SF翻訳家、書評家、アンソロジスト。

1961年2月2日、高知県高知市生まれ。高知市立追手前小学校、土佐中・高等学校を経て、京都大学文学部文学研究科卒(英語アメリカ文学専攻)。

 1986年、マリオン・ジマー・ブラッドリー『惑星救出計画』でSF翻訳者デビュー。訳書は、バリントン・J・ベイリー『時間衝突』『ロボットの魂』(以上、創元SF文庫)、P・K・ディック『ザップ・ガン』、コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』『航路』など約100冊。共訳書に劉慈欣『三体』三部作、『円』『球状閃電』『超新星紀元』、『カート・ヴォネガット全短篇』全4巻(以上、早川書房)など。

 編訳書に、シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』『輝く断片』(河出文庫)、コニー・ウィリス『最後のウィネベーゴ』(河出書房新社)、『マーブル・アーチの風』、(早川書房)など。

 スタージョン「ニュースの時間です」、テッド・チャン「商人と錬金術師の門」、劉慈欣「流浪地球」(共訳)の翻訳により、第36回、第40回、第54回星雲賞海外短編部門を受賞。ベイリー『時間衝突』、劉慈欣『三体』『三体Ⅱ 黒暗森林』で星雲賞海外長編部門受賞。

〈小説奇想天外〉の翻訳SF時評「海外SF問題相談室」を皮切りに、各紙誌にコラム・書評を連載。〈本の雑誌〉新刊SF時評は1990年から(二度の中断をはさみ)継続中。

 2004年3月に豊崎由美との共著『文学賞メッタ斬り!』を刊行。

 2008年からアンソロジストとしても活動。創元SF文庫『年刊日本SF傑作選』(日下三蔵と共編)とその後継の『ベストSF』(竹書房文庫)、『不思議の扉』(角川文庫)の各シリーズや、『ゼロ年代日本SFベスト集成』全2巻、『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』などのSFアンソロジーを編纂。責任編集の河出文庫『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻で、第34回日本SF大賞特別賞、第45回星雲賞自由部門受賞。

 著書に『20世紀SF1000』、『新編 SF翻訳講座』、『50代からのアイドル入門』、『現代SF観光局』など。

 1995年4月に開設したウェブサイト(http://www.asahi-net.or.jp/~KX3M-AB/)の日記は、その一部が、『狂乱西葛西日記20世紀remix SF&ミステリ業界ワルモノ交遊録』にまとめられている。

 ツイッターのアカウント(@nzm)は、http://twitter.com/nzm/

 日本推理作家協会、本格ミステリ作家クラブ、日本SF作家クラブ会員。「ゲンロン 大森望 SF創作講座」主任講師。

Amazon.co.jp: 大森 望: books, biography, latest update

受賞歴

  • ヒューゴー賞: 『三体』の第1部である『三体問題』は、2015年にヒューゴー賞の最優秀長編小説賞を受賞しました。この賞は、SF文学における最高の栄誉の一つであり、中国語で書かれた作品が受賞したのは史上初のことでした。なんとアジア人作家の作品では初めての受賞となりました。

小ネタ

当時のアメリカ大統領バラク・オバマは、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、「三体」シリーズの愛読者であると自ら明かしたそうです。

彼は「三体を読んでると、日々直面している問題はかなり些細なことだ」と語っていたそうです。

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